・この教材は、健康に関心のある一般の成人が、健康情報の「読み解き方」を学習するために開発されました。 ・18問のクイズに順に答えてください。学習の最後に、クイズの採点結果が表示されます。 ・所要時間は10~20分程度です。 ・この教材が、身の回りの健康情報を読み解く際の助けとなることを願っています。
答え 1問/全18問
私たちの身の回りには、いろいろな健康情報があります。しかし、たとえ目上の人(会長さん)の言うことだからといって、パンを食べることが「健康にいい」という科学的な根拠(エビデンス)にはなりません。
また、八百屋さんが教えてくれたウワサも、それだけでは「健康にいい」という科学的な根拠とは言えません。
あやしげな健康情報にまどわされないためにも、健康情報の読み解き方を学ぶ必要があります。
ウワサの例として、「バナナ」や「ココア」など特定の食品だけを1日3回食べるダイエット法がありました。一時期は流行しましたが、そのうちすたれました。
結局、それだけでダイエットできるという科学的な根拠(エビデンス)はなかったのです。
答え 4問/全18問
サフラン病院の名誉院長は、知らず知らずのうちに、お金を出してくれたカレーメーカーに有利な結果を出そうとするかもしれません。
もしそうであれば、研究の公正さが損なわれないとも限りません。
研究にはお金が必要ですが、どこからお金をもらっているかの公表や、お金をもらったことによって研究が制約されないようにすることが大切です。
お金をもらうことなどで、研究を正しく行うことに影響が出るのではないか、と見なされかねない場合、そこには「利益相反(りえきそうはん)」がある、と言います。
研究の結果をみるときには、利益相反についても注意する必要があります。
答え 6問/全18問
フラフープ運動にかかわらず、偶然にダイエットに成功する人もいるはずです。
試した人数が少ない場合は、偶然の影響を大きく受けてしまいます。逆に、試した人数が多いほど、その結果の確からしさが増します。
コインを投げたとき、表がでるか、裏がでるかは、2分の1の確率です。
しかし、実際にコインを2回投げて、1回は表、1回は裏がでるとは限りません。偶然、2回とも表がでたり、裏がでることもあります。
投げる回数を増やすと、偶然の影響が小さくなり、おおむね、投げた合計回数の半分は表、半分は裏がでるでしょう。
何かを調べるときには、回数や人数を増やすと、より確かな結果に近づきます。
クイズ 8問/全18問
答え 8問/全18問
この情報だけでは、“ヤセルンルン”が体重を減らしたのかは、分かりません。夏の終わりの体重は、ヤセルンルンを飲まなくても、夏の暑さで食欲が落ち、減ったのかもしれません。
ヤセルンルンが体重を減らしたかどうかは、飲んだ場合と飲まなかった場合を比べなければ、分かりません。
(“ヤセルンルン”を)「飲んだ」→「やせた」→「効いた」と考えるのは、「~た」が3つ続くので「3た論法」と呼ばれています。
本当は、比較しないと分からないにもかかわらず、あたかも真実のように聞こえてしまう「3た論法」に、まどわされないよう注意しましょう。
クイズ 9問/全18問
答え 10問/全18問
このアンケートの回答割合は50%でした。つまり100人のうち50人しか回答していません。
残りの回答しなかった50人は、教室に不満で途中で来なくなったため、アンケートにも回答しなかったのかもしれません。
そのため、A町の体操教室に参加すると、90%の人が満足するかどうかは分かりません。
アンケートに回答した人の割合が少ないと、その結果は、A町の参加者全体を正しく代表していないことになります。
調査の結果を見るときには、回答割合を確認しましょう(書かれていないことも多いです)。
また、回答割合が書いてあったとしても、その割合が低すぎないか、そして、回答した人にどんな特徴があるかにも注意しましょう。
答え 11問/全18問
この調査は、体操教室の先生が聞き取っていました。答える人は先生に気を遣って、本当は満足していなくても「満足した」と答えたかもしれません。
また、先生も、結果を良くしたいと思い、「満足した」と答えやすくなるような聞き方をしていたかもしれません。
そのため、B町の体操教室に参加すると、90%の人が満足するかどうかは分かりません。
質問のしかたによって、回答者の考えが正しく伝わらなかったり、答えが誘導されたりすることがあります。
世論調査や、商品のモニター調査などで、誘導質問が行われることがあります。
たとえば、「健康維持には眠りの質が重要だといわれています。あなたは“○×安眠まくら”を使ってみたいですか?」といった質問です。思わず「はい」と答えてしまいませんか?
答え 12問/全18問
住民の平均年齢は、C町65歳、D町50歳でした。
一般に、年齢が高くなるほど、高血圧になりやすいことがわかっています。
C町で高血圧と診断されている住民が多かったのは、赤いパンツのためではなく、C町の住民の平均年齢が高かったからかもしれません。
そのため、赤いパンツをはくと高血圧になりやすいかどうかは分かりません。
一見、原因(赤いパンツ)と結果(高血圧)に関係があるようでも、実はその影に「第三の因子」(年齢)が隠れている場合があります。
年齢や性別は「第三の因子」になることが多く、気にかけておくとよいでしょう。
もっと知りたい!
行動を決めるときは、次の3要素を考え合わせることが望まれます。
・科学的な根拠(エビデンス)
・自分の身体の状態
・自分の価値観や希望
ここは、あなたの腕の見せ所です!
健康情報を上手に使いこなし、できるだけ「なっとく」のいく意思決定ができますよう、お祈りしています。
結果発表
学習のまとめ
問題 | 正否 | 教訓 | 問題 ページへ |
---|---|---|---|
問題1 | 健康情報にはいろいろなものがある | (問題へ) | |
問題2 | インターネット情報をうのみにしない | (問題へ) | |
問題3 | 動物実験より人間での研究を重視 | (問題へ) | |
問題4 | 研究費の出所にも注意しよう | (問題へ) | |
問題5 | 分母に意識!「割合」を考えよう | (問題へ) | |
問題6 | 人数が多い方が、確からしさが増す | (問題へ) | |
問題7 | 「原因」と「結果」が逆の可能性がないか、考えよう | (問題へ) | |
問題8 | 効果は比較しなければ分からない | (問題へ) | |
問題9 | 2×2表で考えると比較しやすい | (問題へ) | |
問題10 | 答えたい人だけ答えている調査は要注意 | (問題へ) | |
問題11 | 測り方(質問のされかた)に注意しよう | (問題へ) | |
問題12 | 原因と結果以外の「第三の因子」をチェック | (問題へ) | |
問題13 | 科学的な根拠(エビデンス)のレベルが高いランダム化比較試験 | (問題へ) | |
問題14 | 比は差よりも大げさに見えやすい | (問題へ) | |
問題15 | 提示のされ方によって違って見える | (問題へ) | |
問題16 | 本当にかなえたいことは何か、意識しよう | (問題へ) | |
問題17 | メリットとデメリットを並べて比較 | (問題へ) | |
問題18 | 科学的な根拠(エビデンス)、状態、価値観を考え合わせよう | (問題へ) |
参考文献
1) がん情報サービスHP 図2無作為化比較対照試験
(Randomized Controlled Trial : RCT)の仕組み 参照
http://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr.html
2) 病気の数字のウソを見抜く 日経BP社 p87 参照
3) Haynes.RB et al. BMJ 2002;324:1350のEBMの新モデルを改変